まとめ〜三度目のパリ

10年目、三度目のパリ。正直そこまでの期待はしていませんでした。パリは大好きな町ですが、もう隅から隅まで見尽くしていましたから、これ以上新鮮な何かに出会えるわけがないだろうと。でも、それはまったくの思い違いでした。シャルルドゴール空港からタクシーに乗り、7区にあるホテルの前で降りたとき、私は自分の知るパリとは完全に違う町、まだ知らない場所にやってきたことに気がつきました。


いえ、正確には、変わっていたのは私のほう。パリはいつでも重厚で洗練されていてプライドが高くロマンティック。そこに汚れと暗部への退廃的な愛着が加わって熟した町の出来上がりです。


以前の私は、前者のほうばかりに注目してパリの美しさにうっとりしていたものですが、今回の私は後者のパリ、アンニュイで古ぼけたムードに眼差しが向かい、そこに引き寄せられてさえいました。ほこりの積もった古い家具は祖父母の家を連想させ、人々の肩の力の抜け方は無駄な背伸びをやめさせる。信号を守らない車と歩行者は規律よりも目の前の何かに注目をうながし、町全体を包んでいるタバコの煙たさはシックな空気を生んでいました。


わたしたちは、いつまでも元気ハツラツというわけにはいかないし形あるものはすべて廃れていきます。そこを真正面から見据えて堂々と包含しているパリ。それは確実に年を取り、人生の後半を意識しはじめた私への賛美のようでした。


今回のフランス旅行では、パリを出たあと、ケルト民族が住んでいたブルターニュ地方と、モンサンミッシェルやクロードモネの描いた景観に出会えるノルマンディー地方を巡りました。すべてが大人のために作られた、大人のための空間。そんな風に感じた、おおよそ10日間の旅です。

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早田みず紀 mizuki hayata〜official

ハワイと旅とスピリチュアル